甲府家庭裁判所 昭和41年(少ハ)1号 決定 1966年7月18日
本人 M・K(昭二一・一・一〇生)
主文
少年を決定の日から二年間特別少年院に戻して収容する。
理由
少年は昭和三八年六月一九日当裁判所において恐喝、同未遂、暴行、脅迫保護事件によって、中等少年院送致決定を受け、印旛少年院に収容され、昭和三九年八月二六日、同少年院を仮退院して甲府保護観察所の保護観察に付されていたものであるが、仮退院の際犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の各号、および同法第三一条第三項にもとづき関東地方更生保護委員会が定めた遵守事項に違反したので昭和三九年一一月一一日当裁判所において、二年間中等少年院に戻して収容する、旨の決定を受け茨城農芸学院に収容されたが、昭和四一年一月五日同学院を仮退院して、新潟県加茂市大字○○×××、実父K・Sのもとに帰住して以来、昭和四一年一一月一〇日を保護観察期間の終了日として、新潟保護観察所の保護観察に付されていたが、昭和四一年三月一八日甲府保護観察所の保護観察に付されていたものである。
少年は前記学院を仮退院の際、犯罪者予防更生法第三四条第二項所定各号および同法第三一条第三項にもとづき関東地方更生保護委員会が定めた、
(1) 無断外泊をしたり、酒を呑んだりしないこと。
(2) 今度こそ仕事をあきずにやること。をよく守ることの誓約したにもかかわらず、
一、昭和四一年一月○○日前記新潟県の実父の許を無断家出して、甲府市○×丁目○の○義父H・Tのもとに赴き、同日以降同年二月一二日頃までの間、甲府市穴切町所在の簡易宿泊所○○旅館に宿泊し、その間自己の背広上衣一着、腕時計一個を同市○○町所在○山質店に金三〇〇〇円で入質し、又義父から現金四〇〇〇円を貰いうけて、これを宿泊飲酒代に費消して無為徒食の生活を送り、義父から再三に渉って注意をされたが全く改めることなく、同年三月○○日頃までの間無断外泊、夜間外出を繰返して正業に従事せず、
二、昭和四一年三月○○日甲府保護観察所の斡旋によって、甲府市○○○町所在食料品販売業、○井○一方に店員として就職したが数日間で理由もなく、無断退職し、前記店員として稼動中雇主から通勤定期券購入名下に現金二〇〇〇円を借用し同金員をほしいままに飲酒代に費消した他、保護観察を行う者の許可を求めないで住居を甲府市○○○町○○○○の○、○○荘に無断転居し、
三、昭和四一年三月△△日頃の夜、飲酒のうえ、義父方を訪れ、同人に対し現金五〇、〇〇〇円を要求し、これを拒否されるや勝手場から包丁を持出し義父およびその家族を極度に畏怖させた。
四、昭和四一年四月○日頃甲府市内の屋台店を梯子酒した挙句、その飲酒の間内妻である○野○○子のつきあいが悪いと立腹し、帰宅後同女の頭髪を掴んで振り廻し、アパートの鉄柱に顔面を打ちつけて怪我をさせる等暴行を振い、
五、昭和四一年三月○日頃実母から現金二、〇〇〇円を貰いうけ、パチンコ、飲酒代に費消し、更に同日夜半飲酒の上木刀、および五合入の酒瓶を持って義父方を訪れ、「明日△日午後六時までに金一五、〇〇〇円をアパートへ持ってこい」と強要し、持参の酒を飲みつつ実母に対し「金を持ってこないと殺してやる」と申し向け、義父、実母を脅迫し、
以って前記遵守事項に違反したものであって、このままでは少年の更生は到底望み難く、将来罪を犯す虞れは顕著であって、少年の健全な育成を期するためには、この際少年を特別少年院に再度戻して収容のうえ、矯正教育を受けさせることが必要であると認め、犯罪者予防更生法第四三条第一項少年審判規則第五五条、同第三七条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判官 千々和政敏)